奥出雲と鉄 たたらと刀

2017年2月19日(日)~24日(金)入場無料 11:00-20:00

開催結果報告

奥出雲たたらブランドとして初の展示会開催となった本展は、メイン展示として刀匠とアーティスト・デザイナーのコラボレーションで試作制作した「鍔5点、刃物5点」を披露しました。
現物展示の玉鋼を触って頂いたり、「たたら操業」をイメージした展示台の上には参考展示の吉原義人刀匠/作 日本刀を屹立させました。
平成29年2月19日~24日の会期中、1,200名を越えるお客様にご来場いただきました。
今後も奥出雲たたらブランドの確立と発信にご期待ください。

試作展示品/鍔5点

  • アーティストのデザイン案をベースに刀匠がアレンジを加えた「鍔(つば)」5点を、デザインCGイメージと併せて展示しました。

(鍔-1)星蝙蝠図鐔【直径85mm】

  • 試作展示品(表)

  • デザインCG(表裏)

  • 安達加奈江(陶芸家)

    夜に羽ばたく蝙蝠をモチーフに制作。空を自在に飛ぶ唯一の哺乳類であり、超音波を発することが出来る蝙蝠は、言語、国境を越えて羽ばたく、自由の象徴ともいえるだろう。
    現代へと続く、日本の技巧を世界中の人に知ってもらう機会となることを期待し作成した。

  • 田中文徳(刀匠 銘:貞德)

    鐔の櫃穴に蝙蝠が掛からない様にとの最初の注文でした。こちらの不注意で図案が表裏逆であった等の問題が絵を描く段階になり気付き、年末の慌ただしい中仕事場に足を運んで頂き有難う御座いました。肉彫りは好きなので、もっと時間を掛けて彫って見たかった作品です。蝙蝠は図案が切れずに入れる事が出来ましたが、星が割と切れてしまい意図が伝わってくれるかが心配です。鍛え上げた地金を丸くし表面の均す所、仕上げの色揚げを千葉県市川市在住の刀匠/山下 浩氏に依頼しました。

(鍔-2)草薙之儀式刀(鍔)【直径80mm】

  • 試作展示品(表)

  • デザインCG(表裏)

  • 石野平四郎(美術家)

    日本神話の怪物、八岐大蛇が表に、裏には蛸の足のような模様が彫られている。
    怪奇作家ハワード・フィリップ・ラヴクラフトの作品に影響を受け、かぐや姫、江戸時代の虚船、神物の伝説などから漂う気配にクトゥルフ神話的存在を感じ、「神の正体を知る民族が儀式の際に用いられたとされる刀の鍔である」という物語を創作することで、曼荼羅のコスモロジーや現代の信心に煙をまき改めて見つめ直す作品。

  • 安藤祐介(刀匠 銘:広康)

    鐔地(つばじ)は広康が鍛え、オロチの図柄は刀身彫りの技術が必要の為、岡山県岡山市で活躍中の柳村宗寿氏にお願い致しました。
    技術的に不可能なデザインの箇所もあり、大幅にデザインの変更を伴い、苦労しましたが、何とか完成した作品です。

(鍔-3)蜂の巣【直径85mm】

  • 試作展示品(表)

  • デザインCG(表)

  • 関川耕嗣(アーティスト)

    オオスズメバチが作る巣をモチーフに鍔をデザインした。蜂が巣を作る際、素材の違いにより出来る柄や、巣の強度を上げ空間を無駄なく利用する六角形の構造の美しさは、ともに奥出雲の自然から生み出される玉鋼と調和する。

  • 田中文徳(刀匠 銘:貞德)

    スズメバチの巣と言う事で、鍛えを荒くして肌を出させてそこに巣を彫ったら…、と思い遣って見ましたが、効果を出す事は出来なかった様です。彫りはもう少し深く彫り下げたかったのですが、時間の都合上この深さに成ってしまいました。巣房の六角の透かしが、思った以上に厄介で手間が掛かりました。小さな穴も開けたかったのですが、今回は彫り込みとさせて頂きました。鍛え上げた地金を丸くし表面の均す所、仕上げの色揚げを千葉県市川市在住の刀匠/山下 浩氏に依頼しました。

(鍔-4)NAGARE【直径75mm】

  • 試作展示品(表)

  • 試作展示品(裏)

  • デザインCG(表)

  • FUKUPOLY(映像デザイナー)

    コンピューターの流体シミュレーションによって自動生成された形状デザイン。
    中心孔(なかごあな)に重力点を設けあたかも流体が中心のブラックホールへ向けて落ち込んでいくような形状が生成される。柔らかく流れるデザインが、新しい「鋼」のイメージを表現する。

  • 安藤祐介(刀匠 銘:広康)

    鐔地(つばじ)は、広康が鍛え、流線のデザインの彫りは高度な鏨(たがね)の技術を用いる必要がある為、岡山県岡山市で活動中の刀身彫刻師/柳村宗寿氏にお願い致しました。
    鐔の掟とデザインとのバランスをお互いに話し合い、柳村氏の助言により完成致しました。

(鍔-5)九尾の狐【直径80mm】

  • 試作展示品(表)

  • 試作展示品(裏)

  • デザインCG(表)

  • 吉野哲平(俳優)

    九尾の狐をモチーフにした鍔。人を惑わす悪しきものとして伝えられる九尾の狐だが、平安な世の中を迎える吉兆であり幸福をもたらす象徴とも云われている。
    元来武器の一部であった鍔から、真の平和を願う象徴としての鍔へ。未来へのメッセージを込めてデザインした。

  • 内田善基(刀匠 銘:義基)

    鍔地鉄(つばじがね)は刀造りと同様に、玉鋼(たまはがね)を折り返し鍛錬した。吉野氏は吉兆として九尾の狐をイメージしたが、象嵌(ぞうがん)の技術を用いた彫りをお願いした渡邉剛広氏は、殷の紂王の后/蘇妲己が太公望によって正体を暴かれた場面に此の狐を表した。おどろおどろしい物語の筈なのに、九尾狐が何故か微笑ましい。掟や仕来たりを離れ刀職者で無い両氏の思いが、伸び伸びと表現された鍔と成った。照魔鏡に映し出された九尾の狐。皆さんとくと御覧あれ。

試作展示品/刃物5点

アーティストのデザイン案を忠実に再現した「刃物」5点を、デザインCGイメージと併せて展示しました。

(刃物-1)矩形刀【長さ160mm】

  • 試作展示品

  • デザインCG

  • 大村卓(プロダクトデザイナー)

    打ち出されたままの鈍い黒色と、研ぎ出されたギラリと光る銀色が半分ずつ並ぶ、技術の標本のようなナイフ。ひと目では刃物に見えないようなシンプルな形状であるが、それゆえ刀の持つ静謐な緊張感が強調されている。

  • 安藤祐介(刀匠 銘:広康)

    この作品は、仕上がりも大村氏の希望があり、手槌で打ったまま仕上げて欲しいとの事で、鑢(やすり)を使っていません。ラインを整えるのに非常に苦労し、刃との境目を整えるのも苦労した部分の一つです。

(刃物-2)KASANE【長さ180mm】

  • 試作展示品

  • デザインCG

  • 鈴木僚(プロダクトデザイナー)

    奥出雲を流れる斐伊川の支流、大馬木川の名勝「鬼の舌震」。谷底には様々な伝説とともに、幾重にも折り重なる巨岩が広がる。
    研ぎ出された刃と力強く折り曲げられた持ち手が、神話が根付く奥出雲の大地を表現している。

  • 田中文徳(刀匠 銘:貞德)

    鋼を曲げると言う事を普段あまりしないため手間取ってしまいました。曲げる方向が少し厄介なため最初は寸法通りの鋼を加工し寸足らずに成ってしまい遣り直す事に。模型を頂いて居りましたのでその寸法までにしたかったのですが、こちらの時間の都合で少し大きく成ってしまった事と、線の取り方が甘くなってしまった事を申し訳く思っております。仕上げの色揚げ、研磨を千葉県市川市在住の刀匠/山下 浩氏に依頼しました。

(刃物-3)凛【長さ270mm】

  • 試作展示品

  • デザインCG

  • 風当将文(プロダクトデザイナー)

    「刀の破片」をコンセプトにした、まるで全身が刃であるかのような小刀。
    中央部の特徴的な切り欠きは、造形的な美しさだけでなく、使用者が誤って刃に触れないための役割を担う。新しい形状でありながらも、日本刀の特徴である切先形状、反りをそのまま残し、伝統と力強さを感じさせる。

  • 内田善基(刀匠 銘:義基)

    風当氏がデザインされた小刀を試作しました。一見“刀の残欠“と思いきや、どうしてどうして…脇差しを造る覚悟が無ければ出来ません。和鋼(わこう)の美しさとデザイナーの思いを、どうしたら作品に表現出来るか。そして貴重な和鋼を如何に無駄無く作品にまとめ上げるか。今後完成度を高める為の研究課題です。

(刃物-4)日出ずる【直径80mm】

  • 試作展示品

  • デザイン画

  • YASUKA.M(アーティスト)

    たたら製鉄に息づく、自然への畏敬を形にするため、「金環日食」をモチーフに作成された。
    黒錆は月の影を、丹念に研がれた刃先を太陽の光に見立て表現。鋭利に光る刃先には、明るい未来を切り開くという想いが込められている。

  • 田中文徳(刀匠 銘:貞德)

    金環食のイメージと丸い刃物と言うことで、円の線に気を付けながらの作業でした。刃鋼・皮鋼と鍛え、割り込みではなく甲伏せで作り込みを行いました。形状を作る事は難しい事は有りませんでしたが、月面を表現する為に表面を荒らしてほしいとの事で行いました所、焼き入れの際に歪みが出てしまい厄介な事でした。火造り後丸くする所、仕上げの色揚げ、研磨を千葉県市川市在住の刀匠/山下 浩氏に依頼しました。

(刃物-5)flowing【長さ240mm】

  • 試作展示品

  • デザインCG

  • 楊子卓(武蔵野美術大学4年)

    山の稜線のような、流れるラインが鉄という材料の美しさを際立たせる。形の美しさだけではなく、持った際に曲面が手に馴染み、制作する刀匠の力と意識を感じとることができるデザインとなっている。

  • 安藤祐介(刀匠 銘:広康)

    このデザインのナイフは、流れる様なラインとヘコミのバランスが重要だと考えて、そこをなるべく再現出来ればと思いました。
    図面では、簡単だと思いましたが、実際に製作に入るとかなり難しく、かなり苦労しました。三本程製作し、一番の作品を出品する事が出来ました。

現物展示/玉鋼(たまはがね)

日本古来の製鉄法「たたら」でのみ得ることのできる至極の鋼「玉鋼」。日本の美と精神の象徴である「日本刀」は、この玉鋼でしか作り出すことができません。
公益財団法人日本美術刀剣保存協会は、国選定保存技術の指定を受け、奥出雲町にある「日刀保たたら」で操業を行っています。日刀保たたらで製錬された玉鋼は全国の刀匠のもとに送られ、刀工の技巧をもって、「日本刀の美」に昇華されていきます。

参考展示品/日本刀

  • 日本刀〈2尺5寸長〉(吉原義人 作)

参考展示品/小刀

  • [左]犀角把白牙撥鏤金銀荘刀子〈正倉院宝物/再現〉(吉原義人 作、撥鏤/麻衣子)
    [中央]弥勒菩薩 小刀(吉原義人 作)
    [右]小柄小刀 鍛冶場の図(吉原義人 作)

参考展示品/鍔

  • 不動三尊梵字透 刀匠鍔
    (吉原義人 作)


  • (江戸時代 雪文様)

関係者式典

日時:平成29年2月20日(月)10:00~10:45
会場:スパイラル エントランス(スパイラル1F、ショウケース横)

  • 主催者あいさつ 「奥出雲たたらブランドを世界へ」
    奥出雲副町長 松浦 士登(ひろのり)
  • 事業説明 総合プロデューサー
    株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所 所長 赤池 学
  • 参画刀匠及び参画アーティスト/デザイナーの紹介
    スパイラル/株式会社ワコールアートセンター 松田 朋春
  • 司会進行
    奥出雲町地域振興課 石富 仁志

合わせて式典では、参画刀匠及び参画アーティスト/デザイナーより制作にあたっての所感を発表。
式典終了後の展示会場では、本展関係者及び新聞等マスコミ関係者など約30名にて活発な歓談が行われました。

  • 奥出雲と鉄 たたらと刀

    2017年2月19日(日)~24日(金)入場無料 11:00-20:00
  • 奥出雲 玉鋼デザイン発表会「奥出雲と鉄 たたらと刀」

奥出雲町のものづくりに関する様々な“思い”を形にして世界に発信していくための証。
自然と神話の世界観の中で、たたら製鉄を中心として自然と人間が見事に協調し、農業と林業そして鉱業の全てが統合した暮らし。
そこで育まれた奥出雲の文化や伝統。
たたら製鉄の技術や日本刀の中に見ることのできる技と美を象徴する証です。